呪いの民俗約8分で読めます

日本の「呪い」用語事典|呪う・祓う・霊・時と方角を41語で

呪術、呪詛、丑の刻参り、お祓い、厄落とし、怨霊、地縛霊、丑三つ時、鬼門——日本に伝わる呪いと祓いの言葉を、意味・読み方つきで一覧にまとめました。「呪う」と「祓う」が対になっている、日本の民俗の全体像がわかります。

文・三森 捷暉

日本の「呪い」は、呪う側の言葉と、祓う側の言葉が対になってできています。呪詛があればお祓いがあり、丑の刻参りがあれば呪い返しがある。片方だけを見ていると、この文化の形は見えてきません。

このページは、呪い日記メディアで解説している呪いと祓いの用語41語を、意味と読み方つきで一覧にしたものです。気になる言葉から、それぞれの記事へ進めます。

呪う ― 人を縛る側の言葉

相手に働きかけ、動きを封じ、災いを願う。呪術の中心には、いつも「言葉」と「見立て」がありました。

用語読み意味
呪術じゅじゅ超自然の力に働きかけて現実を動かそうとする技法の総称
呪詛じゅそ神仏に祈って相手に災いを呼ぶ、儀礼化された呪い
呪縛じゅばくまじないで人の自由を縛ること。転じて心理的なとらわれ
まじないまじない呪術のうち日常に溶け込んだ小さな作法。守る側にも使う
呪いの種類のろい日本に伝わる呪いを系統別に整理したもの
呪いの言葉のろいのことば声に出した言葉が現実を動かすという言霊信仰に基づく呪い
丑の刻参りうしのこくまいり深夜に神社へ参り、藁人形を打ちつけるとされた呪法
藁人形の呪いわらにんぎょう人の身代わりとして藁で作った人形に思いを託す民俗
蠱毒こどく中国由来。閉じた器で生き物を争わせ、残った一匹の力を用いる
黒魔術くろまじゅつ西洋で害をなす目的に用いられたとされる魔術の系統
呪い返しのろいがえしかけられた呪いを送り主へ跳ね返すという発想

祓う・守る ― 縛りをほどく側の言葉

日本の民俗が豊かなのは、呪う技と同じだけ、ほどく作法が積み重ねられてきたからです。

用語読み意味
お祓いおはらい罪や穢れを神事によって清め、身から離す作法
厄落としやくおとし身にふりかかる災いを意図的に手放すための民俗
除霊じょれい憑いたとされる霊を離すこと。お祓いとは系統が異なる
護符ごふ身につけて災いを防ぐとされる札。お守りとは由来が違う
お札おふだ神社で授かり、家に祀る神札。祀り方に作法がある
形代かたしろ自分の身代わりに穢れを移して流す、祓えの道具
塩まじないしおまじない紙に書き、塩とともに手放すことで区切りをつける民俗
九字くじ「臨兵闘者皆陣列在前」の九文字を唱えて身を守る作法
お百度参りおひゃくどまいり同じ道を百度くり返すことに意味を置いた祈りの形
縁切り神社えんきりじんじゃ悪縁を断つ願をかける信仰と、その歴史

霊とたたり ― 残った思いをめぐる言葉

無念は残る、という感覚を、日本人は長いあいだ言葉にしてきました。

用語読み意味
怨霊おんりょう無念を残して霊となったもの。菅原道真・平将門・崇徳天皇が知られる
怨念おんねん積もり重なった恨みそのもの。霊ではなく感情を指す
悪霊あくりょう人に害をなすとされる霊の総称
御霊信仰ごりょうしんこう怨霊を神として祀り、災いから守る存在へ転じてもらう信仰
祟りたたり神や霊の怒りが災いとなって人にふりかかるという観念
生き霊いきりょう生きている人の思いが霊となって働くとされるもの
地縛霊じばくれい土地や建物から離れないとされる霊。昭和の心霊ブーム由来の語
浮遊霊ふゆうれい定まった場所を持たずさまようとされる霊
憑依ひょうい霊が人にのりうつるとされる現象。狐憑きもこの系統

時と方角 ― 境目をあらわす言葉

異界と出会うのは、いつも「あいだ」の時間と方角でした。

用語読み意味
丑三つ時うしみつどき定時法でおおよそ午前2時〜2時半。真夜中の代名詞
逢魔が時おうまがとき日が暮れかかる夕方。魔と逢う刻限とされた
鬼門きもん北東の方角。鬼が出入りするとして避けられた
神隠しかみかくし人が忽然と消えることを、異界の側から説明した言い伝え

妖怪と存在 ― 姿を与えられたもの

見えない力に姿と名前を与える。それも、日本の民俗が得意としてきたことでした。

用語読み意味
百鬼夜行ひゃっきやぎょう夜、妖怪たちが列をなして歩くという言い伝え
付喪神つくもがみ長い年月を経た道具が変じるとされる存在。九十九神とも
座敷わらしざしきわらし家に富をもたらすとされる子どもの姿の存在
式神しきがみ陰陽師が使役したとされる、姿を与えられた力

術者と言葉の力

用語読み意味
陰陽師おんみょうじ律令制下で天文・暦・占いを担った官人。のちに呪術者の代名詞に
安倍晴明あべのせいめい平安中期の陰陽師。実像と伝説の落差が大きい人物
言霊ことだま声に出した言葉には力が宿るという古い信仰

通して見ると、ひとつの構造が見える

41語を並べてみると、系統は違っても共通していることがあります。胸のうちにあるものを、決まった形にして外へ出す。藁人形も、形代も、塩まじないも、お百度参りも、そこは同じです。呪う側と祓う側の違いは、外へ出したあとにそれをどう扱うかの違いにすぎません。

言葉にする、形にする、外に置く。この手続きが、時代を超えて必要とされてきたということでもあります。名前のつかない重さを扱う方法として、モヤモヤを言語化するコツや書き出すと心が軽くなる理由もあわせてどうぞ。

出典・参考

  • 『デジタル大辞泉』小学館
  • 『精選版 日本国語大辞典』小学館
  • 山田雄司『怨霊とは何か 菅原道真・平将門・崇徳院』中央公論新社、2014年

関連記事

あわせて読みたい(仏教の冥界観から見た「報い」)
#呪いの民俗#まとめ#用語事典
この記事をシェアするPost

FAQ

よくある質問

Q.日本の「呪い」にはどんな種類がありますか?

大きく分けて、言葉の力で相手を縛る系統(呪詛・呪縛・言霊)、人形や道具に思いを託す系統(藁人形・形代・丑の刻参り)、生き物や毒を用いる系統(蠱毒)、そして海外由来の魔術(黒魔術)があります。いずれも「胸のうちを決まった形にして外へ出す」という構造を共有しています。

Q.「呪う」と「祓う」はどう関係していますか?

日本の民俗では、この二つは常に対で存在してきました。呪詛や丑の刻参りのように縛る側の営みがある一方で、お祓い・厄落とし・除霊・護符のようにほどく側の営みが同じだけ発達しています。片方だけを見ても全体像はつかめません。

Q.怨霊と悪霊と地縛霊は何が違いますか?

怨霊は特定の人物が無念を残して霊となったもので、菅原道真や平将門のように名前と経緯が伝わります。悪霊は害をなす霊の総称です。地縛霊は昭和の心霊ブーム期に広まった比較的新しい言葉で、国語辞典も「心霊主義的な考えに基づいて」という留保つきで載せています。

Q.丑三つ時と逢魔が時はいつのことですか?

丑三つ時は、定時法での換算でおおよそ午前2時から2時半ごろ。逢魔が時は日が暮れかかる夕方の時間帯を指します。どちらも昼と夜、この世とあの世の境目とされ、異界と出会いやすい刻限と考えられてきました。

この記事を書いた人

森

三森 捷暉みつもり かつき

株式会社スリスタ 代表/ドヤマーケAI 運営

実務で使えるAIサービス群「ドヤマーケAI」を運営し、記事・広告・営業・人事からAI検索可視化までを手がける。YouTubeチャンネル『SaaSは死にましぇん』を発信。感情を書いて手放すアプリ「呪い日記」の企画・開発者。

この記事は民俗・言葉・文化の解説です。医療・法律・宗教上の助言ではありません。伝承は文化として紹介するもので、他者を害する手順を推奨するものではありません。出典のない通説は「俗説」と明記しています。

RELATED

あわせて読みたい

日本の「呪い」用語事典|呪う・祓う・霊・時と方角を41語で | 呪い日記メディア