呪いの種類とは?日本に伝わる呪いを民俗の視点でわかりやすく解説【呪いの民俗】
呪いの種類を、日本に伝わる民俗・伝承の視点からわかりやすく解説します。類感呪術と感染呪術という世界共通の分け方から、丑の刻参りと藁人形、言霊と呪詛、生霊や怨霊、蠱毒や憑物筋まで。呪いにはどんな種類があるのか。実際に人を呪う手順を教えるものではありません。
文・三森 捷暉

ひとくちに「呪い」といっても、日本の民俗のなかには、実にさまざまな形が伝わっています。人形に釘を打つもの、言葉を唱えるもの、生きた人の霊が飛んでいくとされるもの——。この記事では、呪いにはどんな種類があるのかを、あくまで民俗・伝承の話として、大きく分類しながら解説します。
いずれも歴史・文化上の言い伝えであり、実際に人を呪う手順を教えるものではありません。最後に、呪いたくなるほどの感情との向き合い方にも触れます。
呪いを分ける二つの原理(類感と感染)
具体的な種類に入る前に、世界中の呪術に共通する、二つの古い考え方を押さえておくと見通しがよくなります。人類学では、よく似たものは互いに影響し合うという「類感呪術」と、一度触れ合ったものは離れても繋がり続けるという「感染呪術」の二つが、呪術の基本原理として整理されてきました。
日本の呪いも、この二つで多くが説明できます。相手に似せた人形へ働きかけるのは類感の考え、相手の髪や爪、身につけた物を用いるとされるのは感染の考えです。呪いの多種多様な形は、この素朴な二つの発想が、時代や地域のなかで枝分かれしていった姿だと見ることができます。
道具を使う呪い
まず挙げられるのが、道具や人形を用いる呪いです。その代表が、相手に見立てた「形代(かたしろ)」——藁人形などの身代わり——へ働きかけるものです。深夜の神社で御神木に藁人形を打ちつける「丑の刻参り」は、その最もよく知られた形でしょう。丑の刻(深夜一時から三時ごろ)に、白装束で鉄輪(かなわ)を頭にかぶり、七日詣でて満願になると相手に及ぶが、その姿を人に見られると効力が失せる——といった型が伝えられ、京都の貴船神社などがゆかりの地として語られます。
興味深いことに、この丑の刻参りは、もとをたどれば恨みの儀式ではなく、貴船の神へ丑の刻に参って良縁や心願の成就を祈る参拝だったとも言われます。それがやがて、嫉妬や怨みを晴らす呪いの物語へと姿を変えていきました。呪いの形は、時代のなかで意味を塗り替えられていくのです。これらはすべて伝承として語られてきたものであり、実行を勧めるものではありません。
言葉による呪い
次に、言葉そのものを用いる呪いがあります。日本には古くから、言葉に力が宿るという「言霊(ことだま)」の考えがありました。良い言葉は良い現実を、悪い言葉は悪い現実を招く——そう信じられたからこそ、口にする言葉は慎重に選ばれてきたのです。相手の不幸を願って唱える呪詛の言葉や、陰陽師が用いたとされる呪文、九字などが、この言葉の呪いにあたります。
言葉の呪いが恐れられたのは、それだけ「言葉には現実を動かす力がある」と人々が信じていたからです。裏を返せば、言葉には人を害する力だけでなく、自分の心を整え、軽くする力もあると考えることができます。
霊による呪い
三つ目が、霊の働きによる呪いです。生きた人の強い怨みが体を離れて相手に祟るとされる「生霊(いきりょう)」、無念の死を遂げた者の霊が災いをなすとされる「怨霊(おんりょう)」などが知られます。生霊はとりわけ古くから語られ、『源氏物語』の六条御息所が、自らも気づかぬうちに嫉妬の生霊となって恋敵を苦しめる場面は、その象徴として名高いものです。
これらは、憎しみや怨みといった激しい感情が、目に見えない力となって相手に届く、という発想に基づいています。日本人が、感情の強さそのものを一種の「力」として畏れてきたことがうかがえます。なお、相手を「悪しきもの」とみなして祈りで下す「調伏(ちょうぶく)」は、害意をそのまま向ける呪詛とは建前が異なり、こうした霊の力とも結びつけて語られてきました。
生き物や憑き物にまつわる呪い
地域に根ざした呪いの伝承も見逃せません。古代の律令が重く罰した「蠱毒(こどく)」は、虫や小動物を用いて人を害するとされた呪術です。また西日本を中心に、特定の家筋が「犬神(いぬがみ)」や「オサキ」といった霊的な生き物を使役し、人に憑けて災いをなす、とされた「憑物筋(つきものすじ)」の言い伝えもありました。
こうした伝承は、しばしば村のなかの妬みや対立、貧富の差といった、生々しい人間関係を映す鏡でもありました。呪いの物語の裏には、いつも人と人との現実の感情が横たわっているのです。
呪いの正体は、行き場のない感情
こうして種類を見渡すと、呪いの多くは、道具や言葉や霊という「形」をまとってはいても、その正体が、誰かへの行き場のない怒りや怨みであることに気づきます。呪いの伝承がこれほど豊かなのは、いつの時代にも、人を心から憎んだ人がいたからにほかなりません。
けれど、その激しい感情を実際の行動へ向ける必要はありません。誰かを呪いたくなるほどの怒りは、まず言葉にして、自分の外へ出してしまうほうがずっと楽になります。呪い日記は、そうした「誰にも言えない呪い」を、そっと書いて手放すための私的なアプリです。書いた言葉は誰にも見られず、相手を巻き込むこともありません。
関連する言い伝えとして、藁人形にまつわる呪いの意味もあわせてご覧ください。
FAQ
よくある質問
Q.日本の呪いにはどんな種類がありますか?
民俗・伝承の上では、道具を使う呪い(藁人形や形代を用いる丑の刻参りなど)、言葉による呪い(呪詛の言葉や呪文)、霊による呪い(生霊や怨霊が祟るとされるもの)などに大きく分けられます。いずれも歴史・文化上の言い伝えであり、実際に効果が確かめられたものではありません。
Q.藁人形の呪いはどの種類にあたりますか?
相手に見立てた人形(形代)へ働きかける「道具を使う呪い」の代表例です。丑の刻参りで御神木に藁人形を打ちつける形がよく知られますが、これは民俗・伝承として語られてきたもので、実行を勧めるものではありません。
Q.言葉だけでも呪いになるのですか?
民俗の世界では、言葉そのものに力が宿ると考えられ(言霊)、呪詛の言葉や呪文もまた呪いの一種とされてきました。裏を返せば、言葉には人を害する力だけでなく、自分の心を軽くする力もあると考えることができます。
この記事を書いた人
三森 捷暉みつもり かつき
株式会社スリスタ 代表/ドヤマーケAI 運営
実務で使えるAIサービス群「ドヤマーケAI」を運営し、記事・広告・営業・人事からAI検索可視化までを手がける。YouTubeチャンネル『SaaSは死にましぇん』を発信。感情を書いて手放すアプリ「呪い日記」の企画・開発者。
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