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呪詛とは?読み方・意味と律令が禁じた歴史|呪いとの違い・英語表現まで

呪詛(じゅそ)とは、神仏に祈願して特定の相手に災いが及ぶようにすること。古くは「ずそ」とも読み、『続日本紀』729年の禁令や養老律令の賊盗律で処罰対象とされた「厭魅・蠱毒」に連なる行為でした。呪い・まじないとの違い、現代法での扱い、英語表現までを典拠つきで解説します。

文・三森 捷暉

呪詛とは?読み方・意味と律令が禁じた歴史|呪いとの違い・英語表現まで
呪詛(じゅそ)とは、神仏や悪霊などに祈願して、特定の相手に災いが及ぶようにすることです。

ただ「呪う」というより、手続きを踏んで願うという点に、この語の性格があります。相手が決まっていて、祈願という形式があり、しかるべき場所と作法がある。だからこそ古代の法は、これを実際に取り締まる対象としました。この記事では、読み方と意味から律令が禁じた歴史、そして現代法での扱いまでを整理します。

呪詛 早見表

項目内容
読み方じゅそ(古くは「ずそ」「しゅそ」)
表記呪詛・呪咀・咒詛
意味神仏に祈願して、特定の相手に災いが及ぶようにすること
特徴相手が特定されている/祈願という手続きを踏む
古い用例『宇津保物語』(970〜999年ごろ)に「ずそ」の形で
法制史『続日本紀』729年の禁令、養老律令 賊盗律の「蠱毒厭魅」
現代法呪詛自体は不能犯。付随行為は建造物侵入罪・器物損壊罪など
英語curse/hex/malediction/imprecation

読み方と表記

主たる読みはじゅそです。ただし古くは直音でずそとも読まれ、『宇津保物語』(970〜999年ごろ)に用例があります。しゅそという古い形もあります。

表記は「呪詛」のほか、「呪咀」「咒詛」とも書きます。「咀」も「咒」も現在ではほとんど使われませんが、辞書はいずれも同じ項目で扱っています。

辞書の定義 ― 「特定の」がポイント

  • 『デジタル大辞泉』——「神仏や悪霊などに祈願して相手に災いが及ぶようにすること。のろうこと。」
  • 『精選版 日本国語大辞典』——「ある特定の人や物事を激しく憎み、神仏に祈願してそれを害しようとすること。」

精選版の定義にある「特定の」が効いています。漠然と世を呪うのではなく、対象が決まっている。そして「神仏に祈願して」とあるように、自分の力ではなく、より大きな力に頼むという構造を持ちます。

この二つが揃っているために、呪詛は単なる感情ではなく行為として扱われました。行為であれば、取り締まることができます。

律令は、呪詛を犯罪として禁じていた

呪詛の歴史でいちばん重要なのは、これが実際の法で禁じられていたという事実です。

『続日本紀』の729年(神亀6年)には、異端の術を学び、生き物を害する厭魅(えんみ)の類を蓄えることを禁じる令が記録されています。

さらに『養老律令』の賊盗律では、「蠱毒厭魅」——蠱毒と厭魅——が処罰対象として規定されていました。

語何を指すか
厭魅(えんみ)人形や像に働きかけて相手を害する呪術
蠱毒(こどく)中国由来。生き物を用いる呪術
巫蟲(ふこ)上の総称として用いられた語

そして、これは条文だけの話ではありません。光仁天皇の皇后・井上内親王のように、他人や国家を呪ったとして実際に罰せられた貴人・僧侶・呪術者が存在します。

呪詛は、宮廷政治の現実的な武器であり、同時に現実的な罪でした。効くと信じられていたからこそ、法が禁じる必要があったわけです。

呪い・まじない・調伏との違い

似た語との関係を整理します。

語性格
呪い(のろい)和語。いちばん広く、もっぱら悪い意味で使う
呪詛漢語・書き言葉。神仏への祈願という手続き性が強い
まじない災いを起こすことも除くことも指す両義の語
呪術意図や結果の善悪にかかわらず用いる、最も広い語
調伏(ちょうぶく)仏教用語。同種の行為を仏法の側から言う

要点は、呪術という言葉が善悪を問わないのに対し、呪いはもっぱら悪い意味で使われるということです。呪詛はその「呪い」を、儀礼として形式化した言い方にあたります。

日本における代表例が丑の刻参りです。深夜、決まった場所へ、決まった作法で通う——祈願の手続きを踏む点で、まさに呪詛の型を持っています。

語源 ― 祝詞と根を同じくする

「呪」の字は、祝う(祝詞)と呪う(呪詛)の両方に関わります。声に出した言葉が現実を動かすという一点では、祈りと呪いは同じ働きだからです。

呪詛という語も、古代日本の言霊の観念に由来し、「祝詞(のりと)」と語根を共有するとされます。ただしこの語源説は事典の記述であり、学術的な定説として確立しているかまでは確認できません。「そう説明されることがある」と受け止めるのが安全です。

現代の法律ではどうなるか

刑法学では、呪詛それ自体は「不能犯」として扱われるのが一般的です。呪いによって人が害される危険が客観的に存在しない以上、殺人罪などは成立しない、という整理です。

ただし、呪詛にともなう行為は別に処罰されます。
行為成立しうる罪
神社の境内に無断で立ち入る建造物侵入罪(多くの寺社は私有地)
御神木や物に釘を打つ器物損壊罪
相手に「呪った」と告げる脅迫罪

律令の時代は呪詛そのものが罪で、現代は付随行為が罪になる。同じ行為への向き合い方が、社会の前提とともに変わったわけです。効くと信じるなら取り締まる必要があり、効かないと考えるなら別の理由で取り締まる。どちらの時代も、放置はしていません。

映画『呪詛』との切り分け

検索結果に多く出てくる『呪詛』(原題 Incantation)は、2022年公開の台湾のホラー映画です。Netflix でも配信され、台湾で大きな興行成績を記録しました。日本語の一般語としての呪詛とは別の、作品名です。

また『呪術廻戦』に登場する「呪詛師」も作品独自の用語で、こちらは「呪詛」単体ではなく「呪詛師」という語で検索されています。この記事で扱っているのは、あくまで一般語としての呪詛です。

口に出せない言葉の、行き場

呪詛が儀礼として整えられたのは、口に出せない恨みに手続きを与えるためでもありました。誰にも言えない、けれど消えない。そういう思いを、放置せずに済ませる形が必要だったのです。

現代の私たちには、神仏に祈願する作法はありません。けれど、行き場のない言葉が内側に残り続けるという構造は、まったく変わっていません。

相手に届けないまま、言葉だけを外に出す。それができれば、少なくとも溜め続けずに済みます。恨みを吐き出す場所や上司にむかつくけど言えないときもあわせてどうぞ。

出典・参考

  • 『デジタル大辞泉』小学館/『精選版 日本国語大辞典』小学館(「呪詛」の項)
  • 『日本大百科全書』小学館(「呪い」の項)
  • 『続日本紀』神亀6年(729年)の禁令
  • 『養老律令』賊盗律(「蠱毒厭魅」の規定)
  • 『宇津保物語』(「ずそ」の用例)/『蘆屋道満大内鑑』(1734年)

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FAQ

よくある質問

Q.呪詛とはどういう意味ですか?

呪詛(じゅそ)とは、神仏や悪霊などに祈願して、特定の相手に災いが及ぶようにすることです。『精選版 日本国語大辞典』は「ある特定の人や物事を激しく憎み、神仏に祈願してそれを害しようとすること」と説明しています。相手が特定されていること、そして神仏への祈願という手続きを踏むことが特徴です。

Q.呪詛の読み方は?

「じゅそ」と読みます。古くは直音で「ずそ」とも読まれ、『宇津保物語』(970〜999年ごろ)に用例があります。「しゅそ」という古い形もあります。表記は「呪詛」のほか「呪咀」「咒詛」とも書きます。

Q.呪詛と呪い、まじないはどう違いますか?

呪い(のろい)は和語で最も広く、呪詛はその漢語表現にあたりますが、神仏への祈願という儀礼的な手続きを含む点でより限定的です。まじないは災いを起こすことも除くことも指す両義の語で、現代では福を招く方向に寄って使われます。仏教では同種の行為を調伏と呼びます。

Q.昔は呪詛が犯罪だったのですか?

はい。『続日本紀』の729年(神亀6年)には、異端の術を学び、生き物を害する厭魅(えんみ)の類を蓄えることを禁じる令が記録されています。養老律令の賊盗律でも「蠱毒厭魅」は処罰対象とされ、光仁天皇の皇后・井上内親王のように、呪詛の嫌疑で罰せられた例が実際にあります。

Q.現代の法律ではどう扱われますか?

呪詛それ自体は、結果を生じさせる危険が客観的に存在しないため「不能犯」として処罰できないとするのが一般的な整理です。ただし呪詛にともなう行為は別です。神社の境内に無断で立ち入れば建造物侵入罪、御神木に釘を打てば器物損壊罪、相手に告知すれば脅迫罪が成立しえます。

Q.映画『呪詛』とは関係がありますか?

検索結果に多く出てくる『呪詛』(Incantation)は2022年公開の台湾のホラー映画で、Netflix でも配信されました。日本語の一般語としての呪詛とは別の、作品名です。この記事で扱うのは一般語のほうです。

この記事を書いた人

森

三森 捷暉みつもり かつき

株式会社スリスタ 代表/ドヤマーケAI 運営

実務で使えるAIサービス群「ドヤマーケAI」を運営し、記事・広告・営業・人事からAI検索可視化までを手がける。YouTubeチャンネル『SaaSは死にましぇん』を発信。感情を書いて手放すアプリ「呪い日記」の企画・開発者。

この記事は民俗・言葉・文化の解説です。医療・法律・宗教上の助言ではありません。伝承は文化として紹介するもので、他者を害する手順を推奨するものではありません。出典のない通説は「俗説」と明記しています。

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