人と比べて劣等感。羨みと自己否定を書いて分ける
SNSを開くたび、周りと比べて自分が劣っている気がして落ち込む。人と比べて劣等感に苦しむあなたへ、湧いた羨望と自己否定を書き分け、比較の沼から少し距離を取る方法をご紹介します。
文・三森 捷暉

夜、ベッドの中でSNSを眺めていたら、同期の昇進報告、友人の楽しそうな旅行、同い年で活躍する人の記事が次々と流れてくる。指を止めるたびに、自分の一日がひどく色あせて見えてきて、「それに比べて自分は」とため息がもれる。気づけば、他人のまぶしい瞬間を物差しにして、自分の価値を値切ってしまっている——人と比べて劣等感に沈む夜は、誰にでもあります。
このとき、私たちの心の中では二つの別々の感情が混ざり合っています。ひとつは「いいな、羨ましい」という羨望。もうひとつは「それに比べて自分はダメだ」という自己否定です。この記事では、絡まったこの二つを書いて切り分け、比較の沼から少しずつ足を抜いていく方法をご紹介します。
人と比べてしまうのは、弱さではなく心の働き
まず知っておいてほしいのは、人と比べてしまうのは、あなたが卑屈だからでも心が狭いからでもないということです。人は自分がどのくらいの位置にいるのかを測る基準がないと、つい身近な他人を物差しにするとされています。自分を知ろうとする、ごく自然な心の働きなのです。
やっかいなのは、SNSがこの働きを何倍にも加速させることです。画面に流れてくるのは、他人が選び抜いた良い瞬間ばかり。相手の平凡な一日や苦しい時間は映りません。編集された最高の断面と、自分の何でもない現実を並べて、勝てるはずがない勝負をしているのが比較疲れの正体です。だからまず、「また比べてしまった」と自分を責めるのをやめてください。
「羨望」と「自己否定」を書いて切り分ける
比べたあとに湧く感情をひとまとめに「劣等感」と呼ぶと、丸ごと重たい塊になって心にのしかかります。そこで役立つのが、塊を書いてほどく作業です。
まず「羨ましい」を書き出す
「あの人の自由な働き方が羨ましい」「あんなふうに堂々と話せるのが羨ましい」——浮かんだ羨望を、そのまま書き出します。実はこの羨望は、あなたが本当は欲しいものを指し示す地図です。何に羨望を感じるかを見れば、自分が進みたい方向がうっすら見えてきます。
次に「それに比べて自分は」を書き出す
その隣に、湧いてきた自己否定の言葉を書きます。「それに比べて自分は何もできていない」「どうせ自分には無理だ」。書いて眺めると、それが事実の記述ではなく、自分で自分に浴びせている攻撃だと気づきやすくなります。羨望は手元に残し、攻撃の言葉だけを紙の上に置いていく。この切り分けが、劣等感をずいぶん軽くしてくれます。
比べる相手を「昨日の自分」に変える
他人と自分を横に並べる比較は、相手が変われば基準もぶれ、終わりがありません。そこで、比べる方向を横から縦へ、つまり過去の自分との比較に切り替える練習をしてみてください。
一日の終わりに、「今日できたこと」を三つだけ書き留めます。メールを一本返せた、少し早く起きられた、苦手な人に挨拶できた。他人の基準では小さく見えることでも、昨日の自分と比べれば、確かな前進です。この記録が積み重なると、他人のまぶしさではなく、自分の歩幅で進んでいる実感が育っていきます。
なお、劣等感による落ち込みが長く続く、眠れない、日常に支障が出るといった場合は、一人で抱え込まず、心療内科やカウンセリングなど頼れる窓口に相談する選択肢もあります。
誰にも見られない場所で、値切るのをやめる
一日中まわりと自分を見比べている心は、どこかで一度、その物差しをおろす時間を必要としています。誰かの目がある場所では、私たちはどうしても自分をよく見せようと取り繕ってしまうからです。
呪い日記は、誰にも見られない完全プライベートな場所です。ここでは、うまくまとめる必要も、前向きに締めくくる必要もありません。「あの人が羨ましくて、自分がみじめだった」——その生の気持ちを、採点されない場所にそのまま置いていく。他人の物差しから離れて自分に戻る時間を、一日の終わりに少しだけ持ってみてください。
参考文献
- Festinger, L. (1954). A theory of social comparison processes. Human Relations, 7(2), 117–140. 人は自分の能力や意見を評価する客観的な基準がないとき、他者と比べて自分を測ろうとする傾向があることを論じた、社会的比較研究の古典です。
FAQ
よくある質問
Q.人と比べてしまう癖は、どうすれば直りますか。
比べること自体をゼロにするのは難しいものです。人は自分を測る基準がないと、つい他人を物差しにするとされています。まずは「比べてしまう自分」を責めるのをやめ、比べたあとに湧いた気持ちを書き出して、羨望と自己否定を切り分けることから始めてみてください。
Q.羨ましい気持ちと劣等感は、何が違うのですか。
羨望は「あれが欲しい」という自分の願いの表れで、進みたい方向を教えてくれる情報です。一方の劣等感は「それに比べて自分はダメだ」という自分への攻撃で、事実ではなく解釈です。書いて分けると、願いだけを手元に残し、攻撃の部分を手放しやすくなります。
Q.SNSを見ると必ず落ち込みます。どうしたらいいですか。
SNSは他人の良い瞬間だけが並ぶ場所で、比較の材料があふれています。見て苦しくなる時間帯だけでもアプリを閉じ、代わりにその日「自分ができたこと」を書き留めてみてください。比べる相手を他人から昨日の自分に変えるだけで、心はずいぶん楽になります。
Q.劣等感が強くて何も手につきません。相談したほうがいいですか。
劣等感で気分の落ち込みが長く続く、眠れない、日常生活に支障が出るといった場合は、一人で抱え込まないことが大切です。心療内科やカウンセリングなど、頼れる窓口に相談する選択肢もあります。無理に一人で立て直そうとしなくて大丈夫です。
この記事を書いた人
三森 捷暉みつもり かつき
株式会社スリスタ 代表/ドヤマーケAI 運営
実務で使えるAIサービス群「ドヤマーケAI」を運営し、記事・広告・営業・人事からAI検索可視化までを手がける。YouTubeチャンネル『SaaSは死にましぇん』を発信。感情を書いて手放すアプリ「呪い日記」の企画・開発者。
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