人の感情をもらいやすい。抱えた気持ちを書いて手放す
誰かの不機嫌が近くにあるだけで、自分まで重くなる。人の感情をもらいやすいあなたへ、他人の気持ちと自分の気持ちを書いて切り分け、抱え込んだものを手放す方法をご紹介します。
文・三森 捷暉

隣の席の人が不機嫌なだけで、自分が何かしたわけでもないのに胸がざわつく。誰かがピリピリしていると、その緊張が伝染したように自分まで肩に力が入る。友人の悩み相談を聞いたあと、相手より自分のほうが重い気持ちを引きずっている——そんな経験を、日常のあちこちで繰り返していないでしょうか。
人の感情をもらいやすいのは、あなたの感受性が豊かで、共感する力が高いからです。けれど、その力が他人の気持ちと自分の気持ちの境界をあいまいにするところまで来ると、心は他人の感情でいっぱいになってしまいます。この記事では、感情をもらいやすい仕組みをやさしくひもときながら、抱え込んだ気持ちを書いて切り分け、手放す方法をご紹介します。
なぜ人の感情をもらってしまうのか
感情をもらいやすい人には、周囲の小さな変化を敏感に感じ取る傾向があるとされています。相手の表情のわずかな曇り、声のトーンの低さ、その場に漂う張りつめた空気。多くの人が見過ごすサインを、あなたは自然にキャッチしてしまいます。
問題は、感じ取ったあとです。共感力が高い人ほど、相手の感情を頭で理解するだけでなく、自分の中で再現して体験してしまうとされています。相手の不安を想像すると、自分の胸まで不安で締めつけられる。相手の怒りを察すると、自分まで身構えてしまう。こうして、他人の感情がいつのまにか自分の気分にすり替わっていくのです。
これは弱さではありません。人の痛みを想像できる、やさしさの裏返しです。ただ、そのやさしさが自分をすり減らす方向に働いているなら、少し扱い方を変える余地があります。
「これは誰の感情か」を書いて切り分ける
もらった感情に振り回されないための第一歩は、自分の気持ちと他人の気持ちを分けて見ることです。とはいえ、渦中にいるときに頭の中だけで区別するのはとても難しい。だからこそ、書き出す作業が役立ちます。
一日の終わりに、その日ざわついた出来事を書いてみてください。そして、そのときの気持ちの隣に「これは自分の感情か、もらった感情か」と問いを立てます。「上司の不機嫌に反応して重くなった。でもこれは上司の感情で、自分が悪いわけではない」——そう書き分けるだけで、抱えていたものの一部が自分のものではなかったと気づけます。
他人由来の重さを自分の責任だと勘違いしていることは、驚くほど多いものです。書いて切り分けることで、背負わなくていい荷物をそっと下ろせるようになります。
もらった感情は、書いて外に返す
切り分けたあとに大切なのが、もらった感情を自分の中に留めておかないことです。感受性の高い人は、日中に受け取った他人の感情を、夜まで抱えたまま反芻しがちです。あの人はなぜ不機嫌だったのだろう、自分のせいだろうか——そうやって、相手の感情の後始末まで一人で引き受けてしまいます。
そこで、その日もらった気持ちをそのまま書いて外に出します。「今日はあの人の不安をもらって疲れた」「あの緊張感を家まで持ち帰ってしまった」。言葉にして紙に置いた瞬間、それは自分の外側の出来事になります。相手の感情は相手に返し、自分は自分の心に戻る——書くことは、その境界線を引き直す作業でもあります。
感じすぎる自分を責めなくていい
感情をもらいやすい自分を、「気にしすぎだ」「もっと鈍感になれたら」と責める人は少なくありません。けれど、感受性そのものは変える必要のない、あなたの特性です。豊かに感じ取れるからこそ、人の気持ちに寄り添え、細やかな配慮ができるのです。
必要なのは、感じないようにすることではなく、感じたあとに抱え込まない術を持つことです。書いて切り分け、書いて外に出す。この小さな習慣が、他人の感情に飲み込まれずに、自分の心を守る支えになります。
つらさが続くときは
人の感情に振り回されて気分の浮き沈みが激しく、眠れない・何も楽しめない・生活に支障が出るといった状態が続くときは、我慢せず心療内科や精神科などの専門家に相談する目安とされています。感じやすい人ほど、限界まで一人で抱え込みがちです。ここで紹介した方法はあくまで日常のセルフケアであり、医療的な判断に代わるものではありません。抱えきれないと感じたら、早めに専門家の力を借りてください。
「呪い」の形でも、抱えたものを下ろしていい
もらった感情を、「あの人も大変だったんだ」ときれいに理解し直そうとすると、また自分の中に留まってしまいます。無理に相手を思いやり直さなくて構いません。
呪い日記は、そんな抱え込みやすい人のためのアプリです。その日もらってしまった重さを、「呪い」の形のまま吐き出してよい場所として作りました。書いた言葉は誰にも見られず、あなたの中だけにとどまります。人の感情を受け止めてくたびれた日ほど、最後に少しだけ、抱えたものを下ろす時間を自分にあげてください。
参考文献
- ジェームズ・W・ペネベーカー『オープニングアップ 秘密の告白と心身の健康』(余語真夫 監訳、北大路書房、2000年)。抱え込んだ感情を文章に書き出す「筆記開示」が心身に及ぼす効果に関する古典的研究。
FAQ
よくある質問
Q.なぜ人の感情をもらいやすいのですか?
相手の表情や声のトーン、その場の空気を敏感に感じ取り、無意識に自分の中で再現してしまう傾向があるためとされています。共感力が高い人ほど、相手の感情を自分のことのように体験しやすく、近くの不機嫌や緊張がそのまま自分の気分になってしまうことがあると考えられています。
Q.もらった感情と自分の感情はどう区別すればいいですか?
「これは本当に自分の気持ちか、それともあの人からもらったものか」と一度立ち止まって書き出すのが役立つとされています。出来事と、そのとき感じたことを紙に分けて書くと、他人由来の感情と自分本来の気持ちが少しずつ見分けられるようになっていきます。
Q.感情をもらわないようにするにはどうすればいいですか?
完全に感じないようにするのは難しいとされていますが、もらった感情を「自分の中に置きっぱなしにしない」ことはできます。その日抱えた気持ちを書いて外に出し、相手のものは相手に返すイメージを持つことで、引きずりにくくなると考えられています。
Q.人の感情に振り回されて生活がつらいときは?
気分の浮き沈みが激しく、眠れない・何も楽しめない・日常生活に支障が出るといった状態が続くときは、我慢せず心療内科や精神科などの専門家に相談する目安とされています。ここで紹介する方法は日常のセルフケアであり、医療的な判断に代わるものではありません。
この記事を書いた人
三森 捷暉みつもり かつき
株式会社スリスタ 代表/ドヤマーケAI 運営
実務で使えるAIサービス群「ドヤマーケAI」を運営し、記事・広告・営業・人事からAI検索可視化までを手がける。YouTubeチャンネル『SaaSは死にましぇん』を発信。感情を書いて手放すアプリ「呪い日記」の企画・開発者。
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